相手の気持ち

さっき、ぼーっとまるちゃんを見ていた。

大好きな音楽の先生に花を持って行きたいので買って欲しいと、お母さんにおねだり。

するとお母さんは、贈り物は買うだけじゃなく、相手が喜んでくれることを考えて選ぶんだよ、みたいな事を教えた。

去年の合宿の時、市役所に迎えに来たお母さんを見て、二年生のCがべそをかいていたのを思い出した。

周りの子たちが、迎えに来た親に途中のドライブインで買ったお土産を手渡しているのを見て、自分は買っていない事に気づいたのだ。

確かに帰りに立ち寄った伊豆のドライブインで、彼はそういう場所やファミレスによくあるおもちゃのコーナーで、財布を見ながら、どれにしようかなと迷っていた。

バスに戻った彼は、何かのおもちゃで遊んでいた。

そして三鷹に帰着後、周りを見て思い出したのだ。

親が同伴しない、初めてのお出かけ。

自分のためだけにお小遣いを使ってしまった自分が悔しかったのだろう。

楽しかった合宿から帰っていきなりワンワン泣く顔を見て気の毒になり、彼に話した。

「ねえC、お菓子や置物を買ってくるだけがお土産じゃないんだよ。お出かけしている間にCが見たり聞いたりしたこと、たとえばさ、海で泳いだりバーベキューや花火大会とかやったろ、そんな楽しかった事や嬉しかった事、きもだめし行ってびっくりした事や怖かった事、Cが感じたり思ったりした事をお話して、お父さんやお母さん、おばあちゃんに聞かせてあげるのだって、立派なお土産なんだよ。でもね、Cが元気に帰ってきたのが本当は一番のお土産なんだ」。

次の日、彼からひらがなばっかのメール。

「おみやげのいみがよくわかりました。ありがとうございました」。

ちょっと嬉しかったッス。

親の本音、ですもんね。

年長さんの時、春の「親子で学ぶ少林寺拳法教室」に来てくれて、お母さんからワシのファンだと聞かされた。

その夏の都大会でワシがスタッフで仕事してたら、わざわざ三鷹から綾瀬までお母さんと来てくれた。

「来年は一緒に都大会出ような」と約束、翌年それは叶った。

「六年生になったら黒帯になれるかな」、これが彼の今の目標。

その合宿の後、交通事故で大きな怪我をして手術、入院。

見舞いに行き、プレゼントしたバームクーヘンと「チョコレート戦争」の本、喜んでくれました。

年末に練習には復活したけど、その後ワシが出られていない。

色々あるけど、やっぱ自分の上達の為だけではなく、Cだけでなくこの子達が、いや一般の方もそう、上に進む手伝いを、自分なりに出来る事をしてあげなきゃな、これが有段者の仕事やねんなー、先生や諸先輩方がしてくれたように。

いつまでもビギナーじゃないよな、風呂に浸かりながら考えた。

ええかっこしいではなく。

やっぱ少林寺拳法は、辞められない。