ザボン
高校の修学旅行で九州北半分をぐるっと回った。
博多で新幹線を降り、西鉄の観光バスに乗り換え、佐賀から長崎、島原から三角へ渡り、阿蘇を横切り、別府から大阪南港までフェリーの旅。
上本町で近鉄電車を見たとき、ホッとした。
その旅行の行程に阿蘇山がある。
ちょうど昼飯、皿うどんを食べ、草千里を散歩していると、八代から遠足で来たという小学生の男の子たちが野球をしていた。
そこで、一緒に散歩してた野球部のTが「ちょっと打たしてくれ」と声をかけ、仲間に入り、皆で一緒に野球をして遊んだ。
その時、ワシのカメラでスナップを何枚か撮り、小学校の名前を聞いていたので送った。
するとそのうちの代表の一人から「ありがとう」の返事の手紙と一緒に、彼のお父さんがザボン(ブンタンともいうらしい)の苗を数本送ってくれた。
悲しいかな、漁師町の我が家には木を植えるような庭がない(当時な。今はある・笑・)。
東京の下町と同じように、家が隣接し、植木鉢がいくつか並べてあるだけの「庭」しかなかった。
せっかくもろたので、母の実家と親戚に分けて植えてもらった。
その時点から、すっかり忘れていた。
今日、仕事中に携帯がブルブル…。
母が実家を尋ねたら、その木は3メートルもの高さになり、でっかい実を9つもつけていると写メを送ってきた。
実が色づいたら、砂糖漬けとマーマレードにするわと書いてある。
25年もの間、すっかり忘れていたが、九州の名産が三重でもしっかりと実をつけている。
送ってくれた彼と彼の家族に忘れてたことを申し訳なく感じるとともに、ちゃんと成長し、大きな木になったことに感動し、ちょっとうるうる…。
当時小学生4,5年生やったかな、その彼がこちらの大学へ入学したとき、一度手紙をくれた。
がっちりした体格の立派な青年になった彼の写真が添えられていた。
一度会いたかったんやけど、双方忙しく、東京と神奈川でなかなか上手く予定が合わず、結局彼は九州へ帰った。
それ以来、残念ながら音信不通。
今は多分彼は35、6になってるはず。
ええおっさんやろな(笑)、人のこと言えやんけど。
今日帰宅したら、昔の年賀状を探し出し、今もそこに彼が住んでいることを期待して、手紙をかいてみる。
しばらくぶりの無礼を詫び、大きく成長した木の写真を添え報告しよう。
また、25年ぶりに縁が復活することを祈って。
もし手紙が宛先不明で戻ってきたら、「ナイトスクープ」のネタにしよかな(笑)。